頭の上の蝿を追え

しがない某京大生が日常を綴る

中山道中車輪栗毛8日目

友人に別れを告げ東京までの旅路に戻る。

高崎まで来れば東京まであと一歩だ。フィールドは関東平野。「峠」という敵はいない。

深谷で一度昼飯を取った。やたらと「渋沢栄一が愛した」というフレーズが並ぶ。後々知ったが、渋沢栄一深谷出身らしい。丁度、新札の肖像画が発表された頃。渋沢栄一で町おこししようと頑張っているのだろう。彼が愛したというほうとうを食べ心を入れ替える。

埼玉は東京のベッドタウンということもあって普通の街並みがずっと並ぶ。正直、埼玉は走っていても楽しくなかった。地元である大阪を走っているのとなんら変わりがなかったからである。

そう思いながら走っているとバチがあたった。さいたま市内に入ったあたりから大雨に襲われたのである。コンビニで雨雲レーダーとにらめっこしているとどうやら私は雨雲と水分の含まない雲との境目にいたらしい。全速力で走り雨雲とおいかかけっこをしていると雨雲を切り抜けることができた。東京に入る頃にはただの曇り空に変わった。ロードバイクなら雨雲に勝てるようである。

東京からは特に物語はない。板橋、巣鴨と順調に抜け午後5時にはゴールの日本橋に到着した。

東京に行く目的はただ中山道を走る抜けるということだけではない。かつて仲良くしていたが東京に行ってしまった友人たちに会うためでもある。

目的をもって京都大学に入学したが、大学で結論を見出し大学をやめた子。その子は今、東京で将来の夢に向けて頑張っていた。

彼が会ってすぐに放った言葉は「きったな!ホームレスより汚いで!」。しばらく彼とは会っていなかったが、いかにも彼らしい迎え方である。歌舞伎町の居酒屋で京都にいた頃の思い出話や彼の近況で話を咲かせた。

浪人して東京大学を目指していたが、残念ながら不合格となり早稲田大学に入学した子。その子は早稲田大学の学生として学生生活を楽しんでいた。

「いや俺さぁ、今浮気してるんやけどさ。」

浪人の頃から危ない予感はしていたが、東京でしっかりと「彼らしさ」を発揮していたようである。浮気は頂けないが、ある意味で安心もした。

次の日の新幹線で京都まで戻った。

京都から東京まで1週間かけて辿り東京から京都までは2時間半。煙草を燻らしながら車窓を眺め1週間わずかの旅の思い出に耽った。

さて残金500円。給料日まであと15日ほどあるがいかにして過ごそうか。

 

中山道中車輪栗毛7日間。

総走行距離558.7km/5337mのアップ。