頭の上の蝿を追え

しがない某京大生が日常を綴る

中山道中車輪栗毛4日目

バスの停留所であったため長居はしたくないと思い6時前に起床した。

1つ前の記事でも触れたようにこの日はとにかく眠りにつける環境ではなかった。犬の睡眠のように浅い睡眠であったが、意外と寝不足感はない。人は極限状態に追い込まれると変なスイッチが入るというのは本当の話である。

7時に福島関所へ向かう。雨の日ということもあり人は少なかった。昨日負った手のひらの傷がずきずきと痛むが気にしたところでどうしようもない。

福島関所は中山道の主要な関所の1つ。箱根関、新居関、碓氷関と並んで日本四大関所の1つでもある。江戸時代の主要な道といえば「入鉄砲に出女」であるが、福島関所は特に「出女」の取締りが厳しかったそうである。私は専門の必修科目でくずし字を読まなければならず、修行の成果を見せるときだと思ったが全く読めない。見せる相手もいないから構わないのだが。

福島関所で通行許可が下り先へ進める。

福島より日本海側はかなりの山道である。道こそはしっかりしているが集落という集落がほとんどない。「木曽川の源流」がある木祖村を抜けて今までずっと付き合ってきた木曽川と離れる。

福島から2時間弱で奈良井宿に着いた。この日は90%の雨予報だったのだが、奇跡的に持ちこたえている。私は曇り男で雨予報でも曇りか傘をさすか迷うほどの雨に変えてしまう。この日も存分に発揮した。

奈良井宿も規模の大きい宿場町である。今までの宿場町とは違い道幅も広く歩きやすい。しかし景観を守ろうとする徹底さは先の2つの宿場に負ける。車が出入りできる点も少し残念。

いい加減そば以外の食べ物に食らいつきたいと思ったが、なかなか見つからない。長野県の観光地にある飲食店は驚くほどに蕎麦だらけだ。美味しいが、何度も食べては飽きてしまう。結局、岩魚定食の店があったのでそこで食事をとった。

竹細工の店でキセルを買った。私は日頃は喫煙者でキセルは少し憧れであった。勿体なくてまだ使っていないが、覚悟ができれば使うつもりだ。

奈良井を出て最終目的地の諏訪湖へ向かう。

曇り男の力が弱り始めポツポツと雨が降り出した。奈良井から2時間弱で旅人を苦しめた峠の1つである塩尻峠の入口に着く。本格的に登る前に道の駅で休憩する。

なんとなく安曇野ヨーグルトを買ったのだが、このヨーグルトが今まで食べたどのヨーグルトよりも美味しい。長野県の諏訪方面に出かける予定があれば買ってみてほしい。

雨で体が濡れとにかく寒い。体を温めるためにも早く出よう。

塩尻峠はそこまで苦しくない。確かに距離は長いのだが、そのぶん勾配がそこまで急ではないのだ。塩尻峠を登ってしばらくすると「高ボッチ高原入り口」という標識が見えた。そう、高ボッチ高原といえば「ゆるキャン△」の聖地である。あいにくの天気で登ることは叶わなかったが、塩尻峠までの道は志摩リンが見た景色。全身がたぎる。

塩尻峠の頂上に着いた。標高約1100m。頂上は高ボッチ高原ほどではないが諏訪湖を一望できる。志摩リンが見た光景と似ていた。

あとは下るだけである。塩尻峠のダウンヒルはとても心地が良い。眺望が開けており諏訪湖を一望しながら下れるのである。温まった体にも少し冷えた風が心地良い。

ダウンヒルの時間はあっという間に過ぎる。下諏訪まで移動した。明日は和田峠にアタックするのでなるべく近付きたかったのだ。

何気にこの日は平成最後の日であった。

カナディアンロッキーという諏訪地方では有名なステーキハウスでステーキを堪能し下諏訪温泉でくつろいだ。自分の中では限りない贅沢である。

諏訪湖畔で眠りについた。この日は平和な夜であった。

64km/735mのアップ。